私の望む全て

開発者

初作品です。 やさしい気持ちで読んであげてください。

どうして返事もしてくれないんだろう?私は溜息をつく。初めてあの人と出会ったのは、ダイヤが乱れた朝のホームだった。足早にエスカレーターに向かう人の波に押されて、私は危うく線路に落ちそうになった。そのとき、私の手を掴んで「危ないよ」とだけ。それだけ言ってあの人は立ち去った。それから私はホームであの人を探すようになった。平日の朝ならたいてい先頭から3番目の車両。前側のドアの停車位置で電車を待っている。スマホを片手に。いつも1人で。夏はたまに汗を拭き、冬には白い息を吐き、春にはくしゃみを繰り返して。私は何度かあの人の隣に並んだし、5回に1回くらいは、決して大きいとは言えない声で、こう声をかけた。「あの…私のこと、覚えてますか?」あの人はほとんどはこちらを見ることすらなかったし、稀にこちらをみても不思議そうな顔をするだけで、決して返事をしなかった。あの日のことは覚えていないとしてもしかたない。もうしばらく前のことだし。でも、何度か声をかけた私のことは覚えてくれてもいいのに、と思う。ため息をついた私はふと話しかける声に気がついた。「やっと気がついた?」少し幼い声。あたりを見渡してもそれらしい声の主の姿は見えない。「見えないよ。君に僕の姿は見えない。」どういうことなんだろう。幻聴?最近忙しかったから…最近?「思い出せないかな。それとも。思い出したくない?」何を言っているんだろう。思い出すも何も私は…誰なんだっけ…名前は、年齢は、どこに住んで、何をして。何者なんだろう。「忘れちゃったんだね。それでもいいよ。もう、そういうことはあまり大切じゃないんだ」そうなんだっけ。もう?もうってどういうこと?「きみはね。有り体にいうと幽霊なんだよ。」幽霊?それはあの死んだ後の…なんというか心残りみたいなものが世界にとどまっている、みたいなああいう類のもの?「うん。残念だけど、あの人の手はね、君には届かなかったんだ」手。あの人の手が。届かなかった?「そう。君は線路に落ちた。そして電車がきた。残念だけど現実に起こったことはそれがすべてだよ」ああ。そうか。だから私の言葉は。「うんあの人には聞こえない。稀に届…

最初の分かれ道

思い出すも何も私は…

  • 誰なんだっけ…
  • なんでここにいるんだっけ…
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