箱庭
〔検証〕灯
祖母の家の縁の下に、小さな箱庭があった。苔でできた山、砂で描いた川、豆粒ほどの家がひとつ。祖母は、それを「まだ帰らない人たちの町」と呼んでいた。雨の日には、その家の小さな窓に、あかりが灯ることがあった。祖母が亡くなった夏、私はその箱庭を、ひとりで見に行った。家の窓には、やはり、頼りないあかりが灯っていた。私はある日、思いきって、その家の戸を指先で叩いてみた。中から、とても小さな、けれど確かな声で「どなた」と聞こえた。
最初の分かれ道
私はある日、思いきって、その家の戸を指先で叩いてみた。
- 中から、とても小さな、けれど確かな声で「どなた」と聞こえた。
- 私は、こわくなって、返事ができなかった。