海辺の喫茶店

〔検証〕陽

海辺の、小さな喫茶店だった。客は、いつも私ひとりきり。マスターは、注文を聞かない。席につくと、いつのまにか、いつもの珈琲がそこにある。苦くて、少しだけ潮の匂いがする珈琲だ。その日、窓際にもう一人、見知らぬ客がいた。白い服を着た、静かな人だった。その人は、冷めていく珈琲を、ただじっと見つめていた。私は、目を伏せて、自分の珈琲を飲んだ。時計の針の音だけが、店の中を満たしていく。気づくと、その客の姿はもうなかった。テーブルには、ひとくちも飲まれていない珈琲だけが残っていた。マスターは、そのカップを片づけようとしなかった。「あの席は、いつも空いているんですよ」と、マスターは言った。私は、その意味を聞きかえせなかった。

最初の分かれ道

苦くて、少しだけ潮の匂いがする珈琲だ。

  • その日、窓際にもう一人、見知らぬ客がいた。
  • その人は、十年前に亡くしたはずの姉に、よく似ていた。
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